梅の花がチラチラと咲き始めましたね。
さて今回は正統派の化学史本。珍しく古本屋で買った本ですがなかなかにいい本だったのでご紹介。発売が2010年なのでまだ絶版ではないんじゃかな。
化学の歴史
アイザック・アシモフ著
玉虫文一 竹内敬人 訳
ちくま学芸文庫
いやもう「化学の歴史に興味あります」っていう人はとりあえずここから読んだらいいんじゃないかな?
そんな言い方ができるぐらい良い本でした。初手としてとても良くないです?
化学の歴史本、特に通史って意外と無いんです。
例えば元素の発見ストーリーとか、「ゴムの歴史」「化粧品の本」みたいなある材料や製品についての歴史と解説とか、そういうのは割と良くあるんですよ。「トコトンわかる」シリーズみたいな。
そっちはそっちで面白いのですが、この本には化学という学問がどうやって構築されてきたのか、特に化学の各分野を支える理論部分がどう発展してきたのかまで書いてあって、なんというか一般向け科学書として「質がいい」という感じです。
化学、だだっ広いから……書きにくいんだとは思うんですよ……現代に近づくほど物理っぽくなってくるし……
そんなやりにくい分野を、さらに読みやすい文章で綴っているのがこの本のポイントです。訳者の力もあるのでしょうが、言葉の使い方、話の運び方がとても好みでした。痒い所に手が届く、「そこってどうなってんだろ」って思う部分でちゃんと話題が出てくる感じです。
なお著者のアイザック・アシモフはあのSF作家として有名なアイザック・アシモフです。ロボット三原則や鋼鉄都市の人。
アシモフの著作はSFの方しか知らなかったのですが、アシモフ自身が化学を学んでいた、どころかボストン大の講師だったこともあり、結構一般向けの科学書を書いているようなのです。ノンフィクション部門でも賞をとっているということなので、SFに限らずいい本を沢山書かれた人なのだなあと今回初めて知りました。
この本の読みやすさも、フィクションまで沢山書いてる人ならではのものなのかもしれません。
でこの本はもともとアメリカで物理学習向けの啓蒙書シリーズから始まった一冊であるようです。
書かれたのは1965年。50年以上前ですね。つまり内容もだいたい50年前です。ここからどれぐらい化学史研究が進んでいるかわからないのですが、それほど大きく外してもいないだろうな、と思えるのが歴史系の本の良さですね。最新分野はすぐ古くなるから……。
一般向けの限界はありますし、分析化学分野なんかはちょっと弱い感じがありますが分光分析のあたりは頑張って書いてるし、化学史を広い目で通して見たい方には強目にお勧めしたい本でした。
文庫にしては高い?わかる。でも良い本ですよ!!!