選択の先に

読み切った。探求編と完結編。 幸せな結末、何じゃないかこれは。 少なくとも主人公にとってこれ以上の幸福な結末は存在しないだろう。 意外さは無く、完全な予定調和だ。 3巻からは前作までから一気に時間がとんで、 リランの口の中で転がされていたエリンは30歳になっており、 既に結婚して子供も居る。 今度はエリンが「母」になる。 おかあさん、と何度も叫んでいた子供がその母親の立場になる。 だからここからは母子の、家族の物語になる。 そして繋がっていく命の物語だ。 描かれる日常風景が癒し。 エリンとジェシ、リランとアルの2組の親子の様子も面白い。 2巻までは人と獣のあり方が1つのテーマだったが、
今回は時間的な広がりが印象的。 ジェシは何でふっつーにアルに乗ってるんですかねえ…… 政治的な物語、としては。 個人的にエリンの考えって好きになれない。 これってまんまマッドサイエンティストの思考回路だろう。 自らの探究心を満たすため、 自らの生き物に対する思いを実現させるため、 そして自らが、何より息子が幸せに暮らす未来のために彼女は探求し、 過去と真実を白日の下に晒す。 まあ隠されると探りたくなるのが人情ってもんなのは分かりますが…… 昔王獣VS闘蛇で国1つ消し飛んでることは知った上で行動して 結果として同じ轍を踏んだ訳でして。 今回はジェシが間に合ったから良かったものを。 人間が幸福に暮らすために生き物をゆがめるのは間違っていて、 それを正すためには人間や国がどうなろうと二の次だということで。 技術と知識を持ち合わせた人間がそれをどう使うか、ってすごく大切な問題だと思う。 為政者が取れない道を取ることができるのが学者だろう。 私には結局好奇心に負けたとしか見えん。 目の前のものに真剣に向き合って会話する、という姿勢はすごく好きなんだけどなあ。 真王を始めとする為政者たちは、 国内分裂をさけるために、 外敵に立ち向かうために、決断をしていく。 それは王獣を武器として使う決断や戦争をする決断なのだが、 国内分裂については真王自ら望まぬ結婚をすることで回避しようとしたし、 隣国から戦争かさもなくば植民地かって言われたら、そりゃあ。 真王たちだって惨劇が起こることは知ってたけれど、 じゃあ王獣使わず植民地になりますって言えるか?国のトップが。 王獣を武器として使えるようにしたのは、まぎれも無くエリンだ。 ひとつあり得た道は、真王が過去の物語を重んじて、 王獣部隊を作らずこれまで通り闘蛇だけで対抗するという手。 この手を取った場合、結局まともな戦いにならない訳で…… あの場では街が1つ消えて、あとは普通に人間同士で戦争になるか。 世の中はあんまり変わらないかな。少なくとも闘蛇部隊は無くならないな。 国民への説明が難しそうだわ。 逸れた。 物語の最後には、 恐ろしい出来事はきちんと本にされて皆に語り継がれるようになり、 王獣闘蛇は解き放たれて野に帰る。 やっぱりハッピーエンドである。めでたしめでたし。 野に有るものを野に有るようにするために
払った代償でか過ぎない?と私は思うが、
主人公から見るとこの考え方自体が人間本意で身勝手ってことになるんだろうなあ。
私がラーザのトップなら今後攻める。 武装解除したところを狙わない理由が無い。 すぐには無理かもしれないけど絶対持っておくわ、闘蛇。 核兵器的な存在だろ。 主人公の考えが合わんというだけで 別につまらなかった訳じゃないです。 この人の書く日常がやっぱり好きだー。 人々の暮らしを描けるのってすごいと思いますよ。 でもどっちかというと守人シリーズが好きだったな。 戦記物としては守人シリーズの方が出来がいいんでね? 長いから書けることも多いしな。