私は何だ

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なんだか落ち着かない天気ですねえ。 いまいち曇りがちです。 さて半ば義務感にかられて 「イミテーションゲーム」を見に行ってきました。 GW映画が封切りされ始め、 なんだかそろそろ終わりそうな気配がしたので これはまずい!と思い劇場に駆け込んだという経緯。 主人公はアラン・チューリング。数学者。 WW2において、当時世界最高の堅牢さを誇った ドイツ軍のエニグマ暗号を破ったチームのリーダーにして 世界で初めてのコンピュータを作った英国の誇る偉人。 その筋ではこの上なく有名な人ですが 一般的にはそれほどでもないですかね。 この映画はそのチューリングの一生を描いたお話。 なのでエニグマがどんなシステムで動いていたのかとか、 ドイツ軍がどんな方法で運用していたのかとか、 それを破った方法については詳しく触れられておりません。 メインはあくまでもチューリングその人であって暗号の方ではないので。 で、この上なく有名な人ですから あらすじなど調べるまでもなく、 彼が最終的に成功することも、その方法も、 どんな最期を迎えるのかも知っている状態で見に行きました。 それでも十分に面白かったです。 そりゃ色々脚色はしてあるでしょうが、 チューリングがある種のステレオタイプ天才で 作り出す間が面白いのって(笑) その一方で重ねられる嘘が哀しみを誘います。 彼のチームの面子なんかは初めて知りましたし、 彼らのすごさというのは見ていて気持ちよかった。 最後に全部燃やすシーンは狂気じみてて凄みがありました。 最高軍事秘密だからね……しょうがないね…… その後元婚約者と会ってたけど大丈夫なんですかね……。 少年時代の映像はどきどきしましたね……!この子が……って!! いやもう機械に対する思い入れが恋人へのそれでしたもん。 只でさえ世界初の物を作り上げているという気持ちはあったろうに、 そんな名前なんか付けてしまったらもう……切ない。 その中で印象的だったのは、取調室で発した、 「私は、何だ」 という問でした。 計算する機械、思考する機械を作り出した本人に言われるとこの上なく重い。 機械は、人間と方法は違うものの(一応)考える。そして計算によって暗号を読み解く。 チューリングもやはり考える。そして計算によって生死を決める。 あるいは計算によって生死を決めることを決める。 国家の上層部すら欺いて。 この辺り実に壮絶、悲痛でした。 「私は人間か、それとも機械か?」 「英雄か、それとも犯罪者か?」 劇中では、担当の刑事に「私には判断できない」と返されます。 私もわからんな、としか思えませんでした。 「普通じゃなことの肯定」や 「思いもよらない人が〜」という行よりも、 このチューリングの葛藤が心に刺さりました。 全体的に、悲壮感の様な物が終止まとわりついた映画でしたが とっても良かったと思います(粉みかん チューリングを英雄視してないところや、 「大英帝国万歳!」「枢軸滅ぶべし!」、あるいは「戦争反対!」みたいな テンプレイデオロギーが入ってきてなかったところも良かったなあ。 暗号そのものについて知りたい方には サイモン・シンをお勧めします↓エニグマに限った話じゃないですが。