利権がかかった骨肉の争い

5日ほど前に観音開きの扉にぶつけた膝小僧がまだ痛い。

ご無沙汰しております。

がつっていう嫌な音がしました。

痣にもなってないし腫れてもいない辺りがかえって不気味です。

さて最近読んだ本という事でひとつ。

世界史を変えた薬

佐藤健太郎

講談社現代新書

現代でも超有名な薬たち、

ビタミンC

キニーネ

モルヒネ

麻酔薬

消毒

サルバルサ

サルファ剤

ペニシリン

アスピリン

HIV治療薬

について、

その開発話を当時の歴史的な背景と絡めながら

綴っていった本。

実に軽いタッチで、テンポ良く、

さらさらと読んでいけるように書かれています。

詳しい合成法とか、そういうのは抜き。

どんな病気が有って、

その薬がどういう経緯で発見され、注目され、

世の中に送り出されていったか、

という事が中心になっています。

読みやすくて良い本でした。

さとけんはこういう語り口、言葉遣いの方が面白い。

素に近い感じがする(笑

当たり前と言えば当たり前なのですが、

医者だって学者だって善人ばかりじゃない、

ってのが読んだ後の第一印象。

人命がかかってくる世界はタイヘンっすね……。

医薬の世界は有効成分の同定にせよ細菌やウイルスにせよ

「第一発見者争い」が凄まじい。

かなり難しいですからね。原因を決めうつのって。

学者としては名誉をかけてやる訳で、

「世の中の知が増えれば何でもいいよー」

なんて人はまず居ない。

おまけに学会は権威主義的なところが有って、

重要な発見も

「その道の大先生」に否定されるとその後なかなか発展しない。

医薬の世界に限った話ではないですが。

更に新薬開発の段階まで行けば

開発費も膨大な額になるために

会社を上げた特許争い、利権争いに発展しがちで。

仕方ないと言えばそうなんですが、

HIVウイルスをめぐっては

最後に米仏の大統領まで出てきて政治決着させた話には

絶句してしまいました。

医薬品業界怖い。

でもこういうどろっどろの人間臭い話、好き。

もうひとつ。

薬だけじゃなく、

現代日本で私たちが当たり前に享受している、

衛生観念や清潔という考え方も

先人たちの努力の賜物であることが感じられました。

薬の開発だけではダメで、

学問的には統計とか疫学とか、そういったものが発展してこないと

健康な生活ってのは手に入らないんだなあと。

結論:やはりナイチンゲールは偉大だ。