繰り返される圧縮の果てに

結婚式2連はきつい。 先週末も今週末も結婚式でした。 どちらも人前式でした。 ご飯美味しかったです。 でもしばらくは行きたくない……正直しんどい……orz さてそんな結婚式の移動時間も含め、 結構な時間をかけて読んだ本。 ブラックホールを見つけた男 上/下 アーサー・I・ミラー 著/阪本芳久 訳 草思社文庫 科学史系の本。上下巻に分かれています。 文庫なのに1000円以上します片方だけで。 値段見ずにレジもっていってびっくりした。 こういう学術系は油断ならん。 そしてタイトルの軽さからは想像出来ない重さのある本だった。 長いけどするする読める本かと思ったら重いし骨太だしで読み応え十分。 尚原題は 「Empire of the Stars:    Friendship, Obsession and Betrayal in the Quest for Black Holes」 ……どうしてこれがああなった。 感触としてはサブタイトルのニュアンスが近い。 この本の主人公(?)はチャンドラというインド出身の天文学者だ。 天文学者といってもごりごりの理論側、物理畑の人で、 彼の論文は大抵非常に緻密な数式に埋め尽くされている。 本人の希望としては純粋な理論物理学をやりたかったっぽいので、 あんまり天文学者呼ばわりは喜ばれないかもしれないが、 まあ少なくともこの本の文脈においては天文学者だ。 チャンドラの人生を雑に説明すると、 才能溢れるインドの青年が アメリカに取って代わられつつあったとはいえ 帝国主義時代中期〜後期の時代の英国へと渡り、 ケンブリッジで差別的な対応を受けつつも 星の最期、白色矮星について研究を行い素晴らしい成果を上げていた、 と思ったら偉い先生方の争いに巻き込まれてうんざり。 更にその偉い先生の一方である 当時の天文物理学会の巨人エディントンに 聴衆の面前でぼこぼこにされるわ 周りの誰も公然と自分の理論を支持してくれないわで すっかりうちのめされやる気をなくし、 しばらく白色矮星の研究を離れるも 水爆の開発がらみで再び研究をすることになり 計算機の発展も手伝って最終的には認められる、というお話。 裏主人公はエディントン。 上巻の半分はエディントンについて語られている。 相対論を正確に理解している世界3人のうちの1人と言われた権威。 チャンドラにとっては尊敬すべき学者であり、 同時に自分の人生を狂わせた人。 もうね、チャンドラはエディントンにボコられたことが相当なトラウマ。 その後どれだけ名誉ある賞を受賞しても 「どうせ僕は認められない……」みたいなノリなの。 完全に鬱。 ノーベル賞とってやっと少し持ち直すけど、 それだけのメンツの中に居てそれだけの賞とって 何が認められていないだああああ!?と読んでてイラっとするレベルです(苦笑 割と学者人生初期でやられたのが効いたのかなあ……。 扱われている研究テーマについて。 本全体としてはメインはチャンドラの研究沿いだが 「ブラックホールが認められるまで」の道のりが書かれている。 なのでしばらくチャンドラが出てこない事も。 「物質が極限まで圧縮をされて狂ったような密度になったときに何が起きるか」 をめぐって研究者たちが大騒ぎしている、という感じの本。 相対論から星の輝きのエネルギー源の話から色んな話が付随して出てくるが、 メイントピックは「巨大な星の最期」。 数式は皆無といっていい。あくまでお話。 星の組成も原子の構造すらも明らかではなかった時代から 水爆開発まで話が進む事を考えると、 本当に爆発的に科学が進むという事があるのだなあとしみじみしてしまう。 今後こういう速度で研究が進んでいく分野ってどこなのだろう。 生物かなあ。 最後に補遺が付いていて、 実はまだ読んでないのでこれから…読めるかな…… 値段だけの価値は十分あると思いました。文庫だけど。