三つ子の魂抱えて走る

 

梅雨入りしたらしく湿度が高い。

夏本番はまだ先なのに真夏みたいな格好をしている。

今年の夏を乗り切れるか今から不安。

 

 

さて。

今回の本はこいつ。

 

バッタを倒しにアフリカへ

前野ウルド浩太郎

光文社新書

 

表紙からして異様な雰囲気漂ってるが

twitter上で誰かがお勧めしていたのがふと目に留まった本。

すこし前書きから引くと、

 

・・・空が真っ黒になるほどのバッタの大群を、人々に向けて飛ばしていただきたい。・・

・・・逃げ惑う人々の反対方向へと一人駆けていく、やけに興奮している全身緑色の男が著者である。・・・

・・・子供の頃からの夢「バッタに食べられたい」を叶えるためなのだ。

(中点中略)

 

のっけからこれである。

ファーブルに憧れバッタに魅せられた少年が

「バッタ博士」になることを夢見て生きる様が描かれた、奮闘記。

話の大半は著者のフィールドワーク先であるアフリカ、

国土の大半に砂漠が横たわるモーリタニアにて展開される。

 

日本においてモーリタニアといえば、おそらくタコ。

モーリタニア産のタコをスーパーで見かける人も多かろう。

 

そういや、どこやねんモーリタニア

 

ということでググってみた。

 

ここ。

アフリカ北部西端。

砂漠に覆われた国であることが地図からもわかる。

公用語はフランス語。

 

ここに、バッタが出るらしい。

単にバッタというと夏の風物詩の感があるが、

モーリタニアにおいては度々大量発生し植物を食い荒らす害虫である。

その名も「サバクトビバッタ」。

国家存亡の危機レベルまでになるというからその数は並ではない。

日本ではこの食害イメージは「イナゴ」の方が強いかもしれないが、

イナゴとバッタの違いについては置いておくとして、

著者は「サバクトビバッタの大量発生を食い止めるための研究」をするために単身アフリカへ渡る。

研究室ではなく、現地へ。

本書の中で一貫して見せる著者のこだわり。

 

バッタは雨の後に現れる。

が、著者は60年に1度というレベルの大干ばつに遭遇してしまう。

バッタの研究をしに来たのにバッタがいない。

任期付きのポストでこれは痛い。

 

仕方がないと、しばらくの間は砂漠に生きる別の虫、

ゴミムシダマシ」の研究を始める。

しかしまだ現れない。

出現情報もガセ。

仕方がないので別種のバッタでバッタの飼育訓練を始める。

 

この著者、恐ろしく前向き。

というか、その場その場で出来ることに全力を出せる。

フィールドワークは思い通りにいかないことも多いが、

普通なら心が折れていそうなところでも食らいついていく。

逃げたくなるだろという場面で逃げない。

心の底から「研究大好き!!!バッタ愛してる!!!!」というのが伝わってくる。

不安で仕方がなかっただろうことも面白おかしく書いてしまう。

コミュニケーションのための手間は惜しまない。(仏語できないらしいが)

真面目に不真面目を大真面目にやれる。

 

この、バイタリティというのだろうか、

フィジカル面も強そうだが、

なにより社会の中で研究者として、生きる力が凄まじい。

努力の塊みたいに見え、実際めちゃくちゃ努力してるのだが、

著者本人は至極楽しそうである。

多分、楽しいって言い続けている人だ。

 

すごい人だ、というのが読んだ感想。

もう別の世界の人間ですわ……いやはや。

ここまで能動的に人生って送れるものか。

ふと「やりたいことがしたいならば来るべき時に備えて武器を揃え磨きをかけろ」という言葉を思い出す。

少し平たい言い方になるけれど、

なんでも経験しておくというのは大事なことだなあとも改めて思った。

人生何が武器になるか分からんからね。

 

 

バッタは夜間、どうしているのか。

外敵からどうやって身を守るのか。

いったいどんな木を好むのか。

群れとしての行動パターンは。

 

そういったことを研究したようだが、

細かな研究内容についてはこの本の主題ではない。

砂漠の生活だとか、

研究の準備だとか、

相棒のティジャニについてとか、

所長との会話とか、

そういった研究生活の模様が描かれた本。

著者が自ら思う「バッタ博士」になれるかどうかはまだ道半ばだが、

是非とも応援したい(応援というのもおこがましいがいい表現がない)。

研究と絡めた本もまた出してくれるみたいなので、

続編があったらまた買いたいなあと思える本だった。