1週間を7日にしたやつ出てこい

 

先日、土星探査衛星カッシーニがその役目を終えた。

打ち上げから20年間ノーメンテで動き続け

様々な写真を送り続けてくれたカッシーニは、

ミッションコンプリート後13年間を共にした土星の風になった。

データ解析はまだまだこれからだろうが、

ひとまず運用チームの方々はお疲れ様でした。

カッシーニといえば土星土星といえばカッシーニ

そんな探査機だった。

 

ところで土星といえば古来、惑星の一番外側だった。

まだ地球が宇宙の真ん中にいたころの話。

外から順に、土木火日金水月と空には7つの惑い星が存在した。

今日では特にカレンダーの上で我々と馴染み深い。

 

昔から不思議だったのだ。

「日月火水木金土」とは何の順なのか。

そもそも何で7日なのか。神様が7日目に休んだからだっけ?

何で1ヶ月は30日しかなく、

1年を12ヶ月に分割して、

時間は60進法などという計算しにくい手法をとるのか。

我々がカウントせずとも繰り返して日は昇るし、

桜は咲き、梅雨が過ぎ、カンカンと暑くなり、

実りの季節がやってきたと思ったらちらちらと雪が舞う。

そしてまた桜が咲く。

漠然と1日と1年は存在する。ここはまだわかりやすい。

だがそれ以外は、いったい誰がこんな形に区切ったんだ?

1ヶ月が倍の60日くらいあれば締め日なんてものも半分なのに。

1週間が5日ならもっと会社休めるのになああああ

 

そんな疑問にちょっと答えてくれたのがこの本。

 

暦と時間の歴史

Leofranc Holford-Strevens著

政宗 聡訳

丸善出版

 

新書。

これは宇宙開闢の前に時間は存在したかーというような物理のお話ではなく、

人々がカレンダーというものをどのように定め扱ってきたかという方の話。

暦と時間とあるがほとんど暦の話だった。

とはいえ扱ってる期間が長く、

欧州中心の記述とはいえアジアや南米の話もチラチラ出てくるので

内容は盛りだくさんだ。

時系列に沿って年表のごとく書かれた本ではないので、

「歴史」と言われるとやや読みにくい。

もうなんかこれだけの範囲をトピックス毎に叩き込んだ!って感じの。

キーワードは書いといた!あとは調べろ!みたいな。

これ、訳すのも大変だったろうな……。

 

で、わかったことなんだが。

 

カレンダーの制定って、宗教戦争だわ。

 

暦のポイントとしては2つある。

年をどう分割しまとめるか、どう数えるか、太陽暦太陰暦か、というお話と、

起点をどこに定めるか、どこから数えるか、1年の始まりと紀元の始まりのお話だ。

 

前者を決めるとき特に大切だったのが、

「復活祭」「春分の日」「ローマ建国記念日」「ユダヤ教の過越しの祭り」「日曜日」

の、兼ね合い。

 

我々の感覚からしてピンとこないのが復活祭。

正直読んでて全然わからなかった。非キリスト教圏だからか?

これはある程度宗教制度の歴史についての知識が要るだろう。

ただなんか大変そうなのはすごくよくわかった。

ユダヤ教徒とのすり合わせとか。ほんまキリスト教ユダヤ教仲わるいっすね。

 

暦の制定は天文学的意味と農耕的要請からだけではなく

宗教的な意味と政治的な意味を多分に持つ。

必然的にイデオロギーの戦いへと陥るのだが、

それにしたってこれだけ揉めるんか……と少々唖然とするところ。

 

カレンダーはどうやってできたか。

その幅広さと入り込み具合を眺めた本であった。

 

 

なお冒頭の疑問であるが、占星術的な背景があるようだった。

1日=24時間に、7つの惑星の名前を外側から(土木火日金水月)当てはめていく。

そうすると、24÷7=3あまり3で、次の日は3つ内側の星から始まる。

  1時=土

  2時=木

  3時=火

  ……

  24時=火

  1時=日

こうして書き並べて行って、日の始まり=1時のときの惑星を順に並べると

今日の曜日である土日月火水木金となる。

出来上がり。

ちなみにその日1日は始まりの惑星の支配下にあるとされていた模様。

土曜日は土星支配下、日曜は太陽の支配下、といった具合。

土星は不吉な星であったので、そのうちカレンダーの頭が日曜にずらされたとか。

もちろん何で24時間(厳密には12時間×2)やねんという疑問は残るが、

これ欧州エジプトだけでなく中国も早いうちから12時間制なので、

なんというかこれぐらいが丁度良かったのかなあ……。