空間が鳴り響く、その音を聴け

評価: --- --- --- ()

 

1週間ぐらい早く桜満開ですね。

 

こんばんは。

仕事は色々と諦めた。

おとなしく怒られよう。

 

 

 

さて読んだ本。

ちょっと前だから忘れつつあるぞー

 

重力波は歌うーーアインシュタインの最後の宿題に挑んだ科学者たち

ジャンナ・レヴィン著

田沢恭子 松井信彦訳

ハヤカワNF文庫

 

アメリカの重力波発見プロフェクトの舞台裏を書いた本。

時系列に沿って出来事の流れを書いたというよりは

人物とエピソードにスポットが当たっています。

インタビューが挟まりつつ進行するドキュメンタリー番組ってあるじゃないですか。

あれをそのまま本に書き起こした感じです。

 

重力波といえば去年のノーベル物理学賞です。

論文が出てから受賞までめちゃくちゃ早かった。

ヒッグスといい勝負では。

論文発表時ノーベル賞間違いなしと言われ、

2017年の受賞予想でも本命であり、

大方の予想通りにがっちりと賞を取っていきました。

 

ノーベル賞については筆者はちょっと思うところがあるようなのですが、

そうはいっても栄誉ある結果を出したのが干渉計LIGO

こんな結果に繋がるような計画、

アメリカではさぞ国家の積極的な支援のもとに

潤沢な予算が付けられていたのだろうと思ってたのですが。

 

なかなかに、苦労したようです。

その苦労の原因の一旦は過去の失敗にあります。

 

かつてLIGOとは違う仕組みの検出器で

重力波を検出した!」と一度盛り上がったことがありました。

しかし世界各地で多くの学者が追試を試みたにもかかわらずほとんどの場合再現しなかった。

結果として検出は失敗に終わってしまった、という「事件」がありました。

それゆえに重力波検出器の作成は

物理学・天文学にとって軽いトラウマになってしまってしました。

 

そんなこともあって、ある程度形になってきてからでさえ、

議会を説得するの大変だったみたいです。

予算は当初見積もりで2億ドル。

ビッグプロジェクトです。

原理は簡単なのですが要求精度が並じゃない。

当然小型のプロトタイプから作るのですが、

プロトタイプでできるのはあくまで「干渉計というものが作れるか」という機械的なテストで、

一辺4kmの現物を作っても

「それで本当に検出できるかどうか実はわからない」という代物でした。

これでは流石に議会も渋った。

そりゃそうだわ。

 

議会を説得するための計画書を書いた人がいるんですが、

政治的な手法をわかってる科学者って大事だなとつくづく。

「ビッグサイエンス」には賛否があるでしょうが、

それを成し遂げるには予算を引っ張ってくる人、

計画をちゃんとまとめて進行する人が必要。ほんとに。

この辺は普通の会社と同じよな。

プロジェクトを進める大変さをしみじみと感じた一冊でした。