キログラムの定義変更おめでとうございます。
歴史的転換ですね。
キログラム原器は重さの基準点から超精密分銅へと降格したわけですが、
我々の生活にはほとんど関係がございません。
というか当たり前ですが日常に影響がないように定義しました。
いきなり桁が変わったら困るやん。
なお決定したのは昨日ですが、運用変更は来年5月からです。
私は化学を一応勉強した人間ですので、化学のお話を。
化学の基本的な定数、アボガドロ数、モルについてです。
化学的には今回のキログラム定義の変更に伴ってモルの定義も変更になっております。
これまで「0.012kgの12Cの中に含まれる原子の数」=1molという定義でした。
キログラムを使って定義されておりますね。
これが、今回の変更を受けて
「6.022 140 76×10^23」=1molとなります。
要はアボガドロ定数を定義値として決め打ちしてそれを1molとするという話です。
元の「0.012kgの12Cの中に含まれる原子の数」の方が実験値になります。
そもそも、12gの12Cに一体全体いくつの原子が含まれているか。
そんなもんをまさかピンセットで直接数えることはできないので、
別のルートからアボガドロ定数を精密測定する手法が科学者たちによって考えられ、
時代とともにあれこれと変遷してきました。
最近は1kgシリコン単結晶球の結晶格子の長さをX線使って測るとか光干渉計とかそんながトレンドですが、
一番最初は気体の体積から算出してたらしいですよ。
当然時代が下るにつれてどんどんと精密度が上がっていき、
その推奨値は現在でも変動しています。
たとえば
1998年では「6.022 141 99×10^23」
2003年には「6.022 141 50×10^23」
そして最新値は「6.022 140 857×10^23」
となっています。
意外と変わるなあって思いますよねえ。
6.02×10^23までで普段は十分なのですが、
小数点以下6桁目7桁目が不安定というのは精密な話をする際には今日日よろしくない、
ということで今回アボガドロ定数側を決め打つ運びになったということです。
ちなみに最新推奨値と今度の定義値との差は0.000000097×10^23、
見やすくすると9.7×10^15だけ値がいます。
原子9700兆個分ずれるわけです。
元の数が元の数なので、これだけずれても日常的には誤差です。
そもそもあれだけずれてる値なのでね。
これでアボガドロ定数がふらふらと動く値ではなくビシッと決まることになりました。
いやーすっきりしたね!
ところで。
今更なんですが。
モルって聞いただけで寒気がする人、絶対いると思います。
化学の一番最初につまづくとこじゃないかな、モル。
モルって何だよ!12gの炭素が何だってんだ!ってなるとこ。
定義が変わろうが、
1molは原子だいたい6000垓(がい)個のことです。
そんな大きい数めんどくせーからまとめてモルって呼んでるだけですよ。
おにぎりみたいなもんです。
モルはおにぎり。
12g分の米粒で出来たおにぎりが1おにぎりだったのが
米粒の数で定義するようになったんです。
でもめんどくせーのでおにぎりはおにぎりです。
モルはモルです。
たくさんの米。
そんなもんです。
以上!