今更ですけど2021年ノーベル賞結果

 休みの日の昼ごはんは悩む。

 

 

 さて10/4~11の1週間(除土日)で今年のノーベル賞が発表されました。

 去年はこんな感じ↓で、ペンローズに沸き立ったのが印象的だったのと、化学は生化学っぽくCRISPER-Cas9でした。

yamagishi-tea.hatenablog.com

 

 んでまあ、この去年の生理学・医学賞が肝炎ワクチンの開発に対して送られたので、「世情かなあ」と思っていたのですが、今年は今年でmRNAワクチンが来るんじゃね?なんて下馬評もあったりしました。
 ただ選考時期を考えると間に合わないんじゃないかとか、まだ世界的にみて沈静化したとは言えない状況なので時期尚早といった意見も見られていました。

 

 では行ってみましょう。遅くなりましたが、今年のノーベル賞は……

 

●生理学・医学賞

「温感と触覚の受容体の発見に対して」
デビッド・ジュリアス氏 アーデム・パタプティアン氏

 

●物理学賞

「複雑な物理系の理解に対する多大なる貢献に対して」
・「地球環境のモデリング・変動の定量化・地球温暖化の確度の高い予測に対して」
真鍋淑郎氏 クラウス・ハッセルマン氏 
・「原子スケールから惑星スケールまでを含む物理系での無秩序と揺らぎの相互作用の発見に対して」
ジョルジョ・パリジ氏

 

●化学賞

「不斉有機触媒の開発に対して」
ベンジャミン・リスト氏 デビッド・マクミラン

 

文学賞

植民地主義の影響と、異なる文化と大陸の間に置かれた難民の運命についての、妥協のなく、しかし思いやりを持った洞察に対して」
アブドゥルラザク・グルナ氏

 

●平和賞

民主主義と永続する平和の前提条件たる表現の自由を守る努力に対して
マリア・レッサ氏 ドミトリー・ムラートフ氏

 

●経済学賞

労働経済学への実証的貢献」
デビッド・カード氏

「因果関係の分析に対する方法論的貢献」
ヨシュア・アングリスト氏 グイド・インベンス氏

 

 

 ってことで今年は真鍋氏受賞に沸きましたね。おめでとうございます。

 基本的にノーベル賞の文字情報は公式twitterが一番早いので大抵発表の時は自分もtwitterにいるのですが、なにより地学・気象学分野がとったというのがビッグニュースとして駆け巡りました。かなり意外なところから来た感じ。
 真鍋氏の功績は「地球温暖化の予測」と言われておりますが、予測というか気象のモデル構築の方に力点のある話であるようです。気象というのは軍事データにからむことでもあるので、なかなかデータ利用が難しかったであろう時代背景、さらにコンピュータが今ほど優秀でもなく一般的でもなかった頃によくこんなことできたなと思います。この辺、米国に行った理由でもありそうですよね。

(日米の研究環境について色々おっしゃってますが、そのまま真に受けない方がいいと思われる。今は色々と違うでしょうし。参考にすべき点はあるとしても。)

 物理学賞についてさらに言えばみんなが首を傾げたのが「なんでこの3人の組み合わせ?」というところで、「Complex System」……複雑系、と束ねてみたところでどうにも無理矢理感は否めないです。とるべき人を並べてなんかお題目つける、みたいな雰囲気ですね。それだけ詰まってるんでしょうけど。

 

 生理学賞は基礎的な研究に対してでした。

 温感の方は「カプサイシン受容体の発見」「『辛い』と『熱い』は同じセンサー」とも取れそうですが一応お題目は「カプサイシンを使った温感の受容体発見」です。これを使って何度で人間の「熱い」センサーが開くのかを明らかにしたとか。なんだろう、カプサイシン量と温感の相関とか取れてんだろうか……この辺の実験方法はまだよくわかってないです。
 人間の五感センサーの発見はこれまでもノーベル賞をとってきていて、今回触覚と温感がとったことであと残りは味覚だけとなりました。一時期「舌の味覚マップ」なんてのが流行りましたがあれも結構間違ってたということがわかっており、今後受賞があるのかないのか気になるところです。

 

 そして注目すべきは化学賞ですよ化学賞!!!!

 

 こんな王道にくることある!?ってぐらいの有機化学ど真ん中です本当におめでとうございます。TLのテンションも高いのなんのでした。

 不斉触媒というと野依氏のBINAP錯体が思い出されるわけですが、あれは金属原子を含んでいました。何が問題って高いんですよああいうの。あとやっぱり金属含んでるのは毒性的によろしくないんでないか、という感覚もありました。しかし不斉合成、化合物の立体配置を制御するには金属が必須だと考えられておりました。
 それをものすっごく単純で小さな純有機分子でできることがわかり、「有機触媒」という概念を打ち立てたのがリストとマクミランということになります。

 いまさら反応系来るとは思ってn

 かっこいいですよーマクミラン。なんせ「マクミラン触媒」という名前になってるぐらいの人です。

            f:id:yamagishi_tea:20211017132127p:plainマクミラン触媒、これです。シンプル!

 これだけど真ん中だと解説記事も出るわ出るわ。ケムステさんあたりが詳しいので乗っけときます。

www.chem-station.com

 

 

 あとちょっと今年の経済学賞面白そうですね。経済学の「実験」に関する内容とかで、キーワードは「ランダム化」らしいです。自然科学のようにはいかない実社会のことですから、どう扱っているのか結構気になります。なんか新書ないかな。

 

 

 以上、今年のノーベル賞でした。また来年。