ふと下っ腹の出がやばいレベルに達していることき気づきました。
どうもこんばんは。
冬ってチョコ美味しいよね………
さて前回記事に引き続き
(リンク先公式PDF)
濃いコーヒーを飲み干して、午後の部スタートです。
4 多様な金属元素
「人類が霞を食って生きることが可能になる時代は来るか」
ということに繋がっていく、気体分離についてのお話でした。
地球上の元素のうちほとんどが地中にあるわけですが、その分布には偏りがあります。
現代社会で必要な多くの元素は中国にありますし、
ウランは日本の国土に利用可能なほどありません。
しかし「気体」は世界のどこでもおおよそ組成が同じです。
これを利用しない手はない。
地球温暖化の要因として人類が戦わねばならないガス代表がCO2。
これを利用する方法に道筋をつけようではないか。
CO2はInvisible Goldである!!
ほんまかな、と思いますが、野心的ですね。
ある元素(化合物)を利用しようと思った時、
大切になるのは「分離」「貯蔵」「変換」の3工程です。
変換は一番分かりやすくて、
CO2そのままでは使えないので使える形にしましょうということ。
例えばCOとかにするんですね。触媒化学の領分。
貯蔵はどちらかというとメカニカルな話で、
特にガスなんかは体積でかいのでどうやって貯めとくのか考えます。
そしてこの先生の専門が、冒頭にも書いたように「分離」な訳です。
いかにエネルギーを使わず分離するか。室温で、常圧で。
環境問題を解決しようということでCO2を使おうとしているのに、
わざわざCO2を発生させて使うんじゃ意味がありません。
大気から、あるいはプラント排ガスから、
色んな種類の気体が混ざった中からCO2を分けるということをやらねばならない。
CO2とCO、N2、O2を分離するためにはどうしたらいいだろうか?
そのための材料として、分子でできた多孔質(ポーラス)材料=PCPs(MOFs)を研究されています。
読んで字のごとく穴が多い材料なのですが、
何せ穴のサイズが分子レベルなので活性炭なんかよりも何桁も多い表面積を持ち、
それだけたくさんのガス分子を取り込むことができます。
多孔質の材料分子は金属錯体。
まっすぐで曲がらない有機分子を辺、
金属イオンを頂点としてがっちゃんがっちゃんと分子を組み立てることができるんです。
辺である分子に何を使うかによって穴のサイズなどを変え、
どのガスを通してどのガスを遮断するかというのを操作します。
簡単に書きましたが、ここが難しいのです。
サイズが近いもの、形が似てるもの、極性が同じようなものはどうしても分けにくい。
ここに研究者の腕があるわけです。
今回はCOとN2を分ける方法。
COが結合するとぐにゃっと穴の形が変わる錯体なんてものが登場しました。
しゅごい………金属錯体って動くんだ………
歴史的に、金属は銅(Cu(1))からスタートしているらしいです。
溶媒を抜くと壊れてしまうものだったそうなのですが、
その時代からよくぞここまで、ですね。
なかなかトータルで省エネになるかとかトータルでCO2削減になるかとかって難しい議論ですが、
ここはしっかり考えておかなきゃならんよなあとしみじみしました。
5 さまざまな周期表
ここまで元素に着目した公演が続きましたが、
この講演は「周期表そのもの」へスポットを当てたものでした。
講演者の方はいわゆる「周期表オタク」らしく、
周期表の歴史やそれが書かれた参考文献の紹介、
世界中で発表されたオリジナル周期表が掲載されているHPも教えていただけました。
その名もずばり、
The Internet Database of Periodic Tables
(直リンク先はホーム画面。タイトルをぐぐればまさに該当ページが出ます)
ぜひ行ってみてください。
英語サイトですが、眺めてるだけでも楽しいです。
こんなにあるのってぐらい色々と考えられています。
世界広い。
この先生自身も「エレメンタッチ」という立体周期表を考案されています。
(こちらの公式HPより)
「周期」表という名前なので、円形や螺旋系にしたい気持ちはとてもよくわかります。
自分も考えたことあります。
考案中に無理だなって思ってやめましたが。
これは螺旋型の周期表ですが、原子軌道まで考えられたものになっています。
HP行けば印刷もできます。
今お馴染みの周期表を作ったのは「ヴェルナー」です!と強く主張されていたのはこの先生(笑
6 ありふれた元素から
外からの刺激で「スイッチング」=相転移する材料を研究されている先生。
例えば光を当てたり、温度を変えたり、磁場を当てたりすると、
材料が持っていた性質が変わるという材料です。
光をあてると反応が進行して性質が変わる、というと「光化学反応」がありますが、
光化学反応は光(光子)が当たったところからポツポツと反応が行くのに対して、
光相転移は光を当てるとある瞬間に雪崩をうったように変わるそう。
サイト間に働く力が強くて、一気にずるっといくんですね。
この先生は酸化チタン、その中でも五酸化三チタン(Ti3O5)へ着目しています。
酸化チタンというと、有名なのはちょっと前に話題になった「光活性」性能を持つ二酸化チタン(TiO2)ですね。
紫外線が当たると有機物を分解する性能が現れるので、
外壁なんかに塗ると汚れが分解されて落ちてくれるというやつ。
またきれいな白色をしているので、顔料として使われることもあります。
五酸化三チタンは刺激によって金属になったり半導体になったりするそうです。
ベータ型だと半導体、アルファ型だと金属。
よく知られているのはこの2つで、これもスイッチングしていますが、
作り方を工夫するとラムダ型というタイプができることを新たに発見。
私はセラミックの作り方についてはよくわからないのですが、
ラムダ型はいわゆるゾルゲルというやつに逆ミセルというのを組み合わせて作るらしい。
これだと手間がかかるので、後ほど大量合成できるプロセスも見つけたとか。
セラミックの分野ではゾルゲルって確かによく聞く気がする……中身知らないけど……
この新しいラムダ型五酸化三チタンに圧力をかけると、ベータ型にチェンジするらしい。
ラムダ型自体は金属らしいので、ラムダを60MPaで押すと半導体になります。
スイッチング。
しかしこの材料の最大のポイントはそこではありません。
ラムダに60MPaの圧力をかけると240kJ/Lのエネルギーが放出されてベータに。
逆に、ベータに230kJ/Lのエネルギーを加えると、つまりあっためるとラムダ型になる。
ラムダになった五酸化三チタンをそのまま冷やしていってもラムダのまま。
そしてまた60MPaの圧をかけるとエネルギーが吐き出されてベータへ。
圧力をかけるまでエネルギーを溜めておける材料になる!
エネルギーを溜めておきたいという需要は大きいです。
昼にためて夜に出す、夏にためて冬に出す、あっちでためてこっちで出す。
チタンの酸化物という材料としてはよくある(って本当に言っていいんだろうかこれ)
長期間エネルギーを蓄積する材料としての可能性がある、とのことでした。
なおこの60MPaという数字、
大気圧が0.1MPaなので一見してべらぼうに大きいですが、
金属酸化物が相転移を起こす圧力としてはかなり小さい部類らしい。
その辺の感覚は普段からやってる人じゃないと分かりません。
私にもわからない。小さいのかこれで。へえ。
ここで午後の第一部が終了。
休憩に入り、いよいよ最終タームです。