人はどのように鉄を作ってきたか - タイトル通りの徹頭徹尾とことん製鉄本

6月中に梅雨が明け猛暑の気配を見せておりますが皆様お元気ですか。七夕までに梅雨から抜けるって初めて聞いたんですけどもーー!!

 

さて読書メモ、随分久しぶりですね。いつぶりかなーと思ってみてみたら2月ぶりですって。震えますね。
読書会も終わって余裕ができたのでぼちぼち再開しようと思います。発表者でもないのに余裕ないってなんなんですかね?

人はどのように鉄を作ってきたか 4000年の歴史と製鉄の原理
永田和弘
講談社ブルーバックス

 

なんだかとっても趣味に走った本だな!!(褒め言葉)というのが第一印象。
書いてある中身もかなり「ガチ」なのですが、話の運び方も「製鉄炉の基本構造と部位の名前ぐらいは知ってるよね?」というノリでくるのでズブの素人としては「ちょっとまってください」と返したくなるような。まあ著者は東工大工学部の金属工学科を出た大学教授なので、製鉄マニアが書いた本と思えば納得感があります。
あれですよ。たたら製鉄がいきなり登場するにも関わらず「たたらとは何か」という話すら出てこないですからね。アッそこは常識なんですねはい……。読んでるうちになんとなくわかってくるようにはなっています。

 

全体的な流れとして、歴史の流れを順に追っていくというよりは、ある時代ある場所での鉄と製鉄法について個別に見ていく色合いが強い本でした。

刃物の街、関市を訪れながらのたたら製鉄の解説に始まり、著者自作のたたら製鉄炉が登場。製鉄炉の寸法や組み方、鉄の原料と製鉄工程の説明と続いていくのですが、この辺りの書き込みの熱の入り方が本書では一貫して強いです。
歴史上に登場した様々なタイプの製鉄炉のサイズやらそこで見つかったスラグ(製鉄時に出るゴミ)の素性などに対してしっかりとした記載があり、「スラグを見ればどんな鉄を作っていたかわかる」といいながらここでは炭素濃度が何%ぐらいの鉄を作っていたと解説していきます。わかんのかよ。

やーそれにしても金属工学、むっずいですね。
なんといっても1300℃あたりで起こっている不均一系の化学なんで、普段触ってる反応とはちょっと違いすぎて面白いです。俺にはなんもわからん。
ただ流石に対象が人類が長く利用してきた「鉄」なだけあって、製鉄そのものについても製鉄の歴史についてもよく研究がなされている雰囲気は受け取りました。かなりの厚みがある感じ。

製鉄中に鉄から線香花火みたいに火花が散るのはなぜか、など、よくもまあ解明したものだと思います。「沸き花」というおしゃれな名前がついているのですが、細かい鉄の微粒子が酸化して発火している現象らしいですよ。

 

 

製鉄の歴史上欠かせない人物にベッセマーという人がいて、この人のおかげで高価だった「鋼」を大量生産できるようになりました。

この本を買った動機の一つに「ベッセマーが何をやったのかを具体的にもう少し詳しく知る」というのがあったのですが、よく言われるリンの問題だけでなく気泡の問題もあったとか、具体的にどんな技術で誰と特許で揉めていたかとかまで書いてあって、一歩踏み込んだことがわかりました。

 

細かいことについては「そ、そうなんだー」としか言いようがないのですが、著者がフィンランドスウェーデンにある遺跡を訪ねて行く様子は旅行記のようでもあり、珍道中の描写が面白くもあります。

 

 

マニアックな製鉄本、読み応えがあって良本でした。