ノーベル賞の心意気

 

スーパームーンだそうですが絶賛雨です。

 

関東からこんばんは。

スーパームーンには厳密な定義もないので

天文界隈ではその呼び方やめてくれという声もあるとかないとか。

 

さてこんなの読みましたよ。

 

医薬品とノーベル賞 がん治療薬は受賞できるのか?

佐藤健太郎

角川新書

 

今年のノーベル医学生理学賞には

嬉しいことに日本人の大隅教授がオートファジーに対する研究で受賞されましたが、

昨年のノーベル医学生理学賞も日本人でした。

大村教授です。

覚えておいででしょうか。

線虫が引き起こす感染症への治療薬イベルメクチンに対する業績での受賞です。

 

医学生理学というと薬の開発に対する受賞が多いかと思いきや、

特に最近は意外とない、というのがこの本の滑り出しです。

医薬を開発するための手法開発や免疫メカニズム解析はあるのですが

医薬そのものというのは珍しく、

大村氏/キャンベル氏と屠氏の受賞はそれだけに

「なぜこのタイミングで医薬に?」という関心を引きます。

 

医薬の評価は難しい。

効くと思われていたものが意外と効かず、

良いと思われていたものに思わぬ副作用があり、

ダメだと思われていたものが別の病気に効いたりするものです。

本当のところはわかりませんが、

この読みにくさが医薬に対する受賞をためらわせているのではないかとのこと。

 

それでも今回選考委員が三氏への受賞を決めた理由。

これも憶測になりますが、

「大村氏らの手法」に対して贈られたのではないか、とみられています。

 

ひとつは開発手法。

静岡県の土、自然の中から見つけてきた菌から見つけ出された化合物、という、

湯水のごとく資金をつぎ込んだ最先端の遺伝子技術云々ではなく

古典的な手法によって得られた薬であるという点。

もちろんそれだって十分時間も金もかかるしより博打的ではあるのですが、

最近の金のかかりすぎる医薬開発に対するアンチテーゼなのでは?

 

もうひとつはターゲット。

はじめは動物用として商品化されたイベルメクチンを人に使えるようにした時

開発元のメルク社が「無償提供する」ことを決断します。

線虫が引き起こす感染症は、貧しい、衛生環境の整っていない国で発生し拡大します。

そのような病気は医薬を開発しても儲からないので、

製薬会社も開発の二の足を踏みがち。

仕方ありません。

ボランティアやってたら会社潰れます。

製薬会社だって私企業です。

気持ちはよくわかる。

しかしそういう貧しい国で取り残されている、

多くの人々がまだ苦しんでいる病気に対して医薬は開発されるべきだ−

このような思想に基づいて受賞が決定されたのではないか。

 

というのが著者の主張です。

書かれている通り選考過程は完全にマル秘で

開示があったとして50年後なので本当のことはわかりません。

 

私としてはメルク社がどうやって儲けているのかが気になります。

絶対赤字にはしていないはずです。

どういうシステムになっているのでしょうか。

動物用でバカ売れしたからもういいのでしょうか。

それにしたって製造分の原価は払っていただかないと。

 

がん治療薬はノーベル賞を受賞できるか。

 

この流れで行くと、

今のやり方では選考委員の好みではないから無理なのではと

そんな話になってしまいそうですが、

医薬そのものが多様化していき治療のターゲットも増えていく中、

まだまだやれることはあるし直せる病気もあると信じたいものです。

 

 

やっぱり国家財政が破綻しそうだけどな!

オプシーボの薬価が引き下げられると決まりましたがどうなりますかねこれ!