|
|
毎日毎日あっつい日が続いております関東沿岸部です。
梅雨が終わったと思ったら一気に真夏ですよ。
九州の方には台風が来ていて
七月頭にして大変なことになっております。
みなさまお気をつけください。
さてお久しぶりのブックレビュー。
元素をめぐる美と驚き(上)(下)
アステカの黄金からゴッホの絵の具まで
ヒュー・オールダシー=ウィリアムズ 著
安部恵子 鍛原多惠子 田淵健太 松井信彦 訳
ハヤカワNF
またも教科書の表紙裏のこいつの話題。
見るだけでぶつぶつが出るという人もいそうなry
周期表ですね。
ちょうど去年あたりに「スプーンと元素周期表」のレビューをしたかと思うのですが、
テイストとしてはざっくり同系統な本です。
ただこちらのほうがより人文系に近い感じがします。
いやほんとに文系の人にお勧めします。
無教養をさらけ出すようですが、
ところどころに有名な文学作品からの引用が出てくるのですけど
私にはさっぱり分からんのですわ。かなしみ。
英文学には元素の名前が度々出てきます。
日本では詩の中に元素名が出てくるパターンあんまり見かけないかもしれませんね。
宮沢賢治あたりは書いてそうだけど。
ともかくそういうのが全くわからない。
これ人文系の人が読んだほうがいいのではと思うレベルです。
ちょっと地理に詳しいとより読みやすいでしょう。
鉱山の場所などがちょいちょい出てきますので。
「スプーン」が比較的個別具体的なエピソードをまとめて
周期表をふらりと散歩する感じだったのに対して
「美と驚き」はより人間社会・文化を形作っているものとしての元素を描いています。
話題は「力」「火」「工芸」「美」「大地」の5章に分けられ、
その元素がどのように発見されたのか、
どのように社会に迎え入れられ扱われたか、
今どこでどうしているのかについて描かれています。
例えば「力」の頭に出てくる元素は金Auですが、
トピックタイトルは金ではなく「エルドラド」
-古くは神官を指しコロンブスの時代には黄金郷を意味した言葉-であり、
大英博物館に鎮座している黄金の像の話から始まります。
著者は身の回りのものをばらして元素を取り出し
お手製のサンプル入り元素周期表を作り上げてしまうようなマニア。
元素は研究室にあるのではない!と言わんばかりに
街へ山へ、そしてやっぱり、研究室へと繰り出して行きます。
元素の「発見」は研究室ですからね。
元素は見出されて以来我々の社会に溶け込んでゆき、
そして今やどこにでもある。
そんなことを語り続ける本でした。
個人的には読んでると錬金術への興味がもりもりと湧いてくる本でもありました。
化学が化学になる前の「学問」…そのうちまたそっちの本にも手を出そうかな……