風が吹いたら桶屋は儲かる、か?

 

アラジン見ました。

主題歌の和訳が変わってましたね。

ジニーは相変わらず可愛いし山ちゃんはすごい。

 

 

さて今回読んだ本はハヤカワの数理を愉しむシリーズから。

 

「偶然」の統計学

デイヴィッド・J・ハンド著

松井信彦訳

ハヤカワ文庫ノンフィクション

 

「到底ありえなさそうな出来事は、ありふれている」

 

著者が「ありえなさの原理」と呼ぶ、

一行で矛盾を引き起こしていそうなこの一文が本書の主題だ。

 

よくある「同じ誕生日の人がクラスにいる確率」のように、

私たちは往々にして確率の見積もりを誤る。

 

公正なコインは10回連続で表が出続けてなお次に表が出る確率は1/2である。

そろそろ裏が出るんじゃないかと思ってしまうけれど。

 

ロトくじが2週連続同じ当選番号になることだってある。

過去と同じはまあいい。だが2週連続?そんなこと「起こりうる」のか?

 

私自身、旅先で会社の後輩に会った時には心底びびった。

しかも有名どころの観光地よりはメジャー度が一段下がるような場所で。

「こんなとこで普通会う!?」

 

ほとんど直感的に「ありえない」と私たちが感じることが起きた時、

私たちは有史以来、いろんな説明を考えてきた。

古くからの迷信、占い、神様の気まぐれ、もしくは天罰、誰かの呪い、運命、超能力、エトセトラ。

今だってゲン担ぎぐらいするだろう。

そのうちに「ランダムさを扱う法則」「偶然を定量化する」という学術分野が立ち上がってきた。

奇しくも17C半ば、決定論的宇宙観が現れたのと同時期である。

 

この17Cという時代、科学革命が起こった時代なので、

いろんな分野が爆発的に進んだうちの一つ、ということなのだろう。

あと個人的には「保険業界」の影響が大きかったんじゃねーのと思ってます。

大航海時代の終わり頃だし。

 

 

さて確率を見誤る要因には数学的な側面と人間心理の側面があるが、

数学的な側面の解説が、この本の多くを占める。

そもそも確率とは何か、

「確率」と一言で呼ぶがいろんな種類の確率があるのだ、というテーマの後、

本格的に「ありえない」事象を引き起こす要因の解説が始まる。

主なものは、

 

・不可避の法則

・超大数の法則

・選択の法則

・確率てこの法則

・近いは同じの法則

 

と本書内では呼ばれる。

いくつかは著者の造語だろうかと思うものがあるが、

とにかくこれらが絡まり合って確率というのは意外と(!!)大きくなるのだ。

 

大数の法則などは有名で、「膨大な回数こなせばいつか当たる」というやつだ。

不可避の法則は「起こることの一覧があればどれかが必ず起こる」で、

例えばロト番号を全通り買ったら必ず当たる。

当たり前だが、当たり前すぎて忘れがち。

 

選択の法則は後知恵と言い換えても良いかもしれない。

何かが起こった後からならば確率はどうとでもなる、事後予測だ。

事故が起こった後で原因を探すことは比較的容易だが、

現在進行形で起こっている数々の予兆はその他大勢に埋もれて見逃される。

あるいは、占い師が自分の「予言」が当たった人のみをサンプルとして提示する。

物理の人間原理に繋がる話。

 

確率てこの原理は、「その予測モデルで大丈夫?」。

確率を議論する際に正規分布の釣鐘曲線を用いるが、

本当に確率は釣鐘型に分布しているのだろうか。

「起こる可能性が限りなくゼロ」はモデルが変われば「意外と起こる」に変わりうる。

そして現実に起こる様々な事象の起こる確率は、サイコロの出目ほどには正規分布に沿わない。

ランダム性は何かしらの影響でわずかながら歪められる。

そのわずかな違いが大きな差になる。

カオス理論につながる話。

 

近いは同じの法則はその名の通り、「ほとんど同じなら同じとみなさざるをえない」というお話。

数秘学と相性が良く、

ピラミッドの辺の長さが何かと同じとかそんな話がよくあるが、

その「同じ」って何やねんという。

ただでさえ精度無限大は不可能なのだ。

精度をある程度で妥協すれば、割よく「一致」が起こる。

 

 

これらの数学的・物理的バイアスに加え、

人間には心理的なバイアスも働く。

ただでさえ人間は法則を見つけずにはいられない生き物だ。

多分その方が生存と繁栄に有利だったんだろう。

ランダムさが苦手だ。

 

そんなこんなで、

「ありえない(と直感的に思う)出来事は、(実は計算してみるとそうでも無いため)ありふれている」

ということになる。

もっとも人間は主観で人生を生きているので、

「宝くじは誰かが当たる、しかしあなたである可能性は限りなく低い」

という宝くじに「私が」当たれば、

やっぱり「すごい偶然!日頃の行いが良いせい!」となるのはもう仕方ないと思うのですけど。

 

次々出てくる具体例と解説を読んでいるだけでも

「なるほどなー!」と楽しい一冊でした。