この世は思ったよりも複雑なもの

 

7月が終わった……だと…………

 

はいご無沙汰をしておりました。

昨年が6月中に梅雨が明けるというとんでもない展開だった、その反動のように

今年はようやっと列島梅雨明けらしいですね。

長めの梅雨だったのではないかなぁと思います。

普通梅雨には中休みがあるものですが、

毎日毎日曇天に小雨で最終盤はさすがにきつかったです。

 

ともあれ8月になります。

31日の夜からだらだら書いていたらもう日付超えました。

夏休みが欲しいです。

 

 

さて今回の本。

またハタ違いのジャンルに手を出した感じです。

 

人口学への招待 少子高齢化はどこまで解明されたか

河野稠果 著

中公新書

 

まず本の前に著者の名前なんですが。

「しげみ」さんです。

初めて見ましたよ「稠」。音読みは「チュウ」。

意味は「おおい・しげる・濃い・混み合う」ことらしいです。

それに「果」をあわせてしげみさん。

ご実家は果物農家ですか……?

 

あまりに読めなかったから調べてしまった。

 

 

本題。

 

タイトル通り「人口学」というのが何をやっているのかの解説本。

初版が2007年なので出てくるデータはちと古いのですが、

2019年現在について書かれた続編があるなら読んでみたいと思うくらい面白かったです。

 

人口問題とはなにか

人口統計とはどのようなものか

生命表とは何か

出生率の変動要因は何か

将来予測はどのように行うのか

人口が減るとはどういうことなのか

 

といったことに紙面を割いています。

将来の日本の人口についての話も最後にありますが、

それよりは世界各国の人口統計を基にしながら歴史的な変化について語ったり

統計データをどのように使って計算をするのかということを説明します。

 

中でも大きく取り上げられているのが「出生率」についてです。

 

出生率、めちゃくちゃ厄介ですね。

 

人口が動く原因は「出生・死亡・移動」の3つしかありません。

移動は出生と死亡に比べて数がずっと小さい。

死亡率の変化はすでにいる人間が生き残れるかについての話なので

比較的原因がわかりやすく予測もしやすい。

人口増に特に効くのは子供の死亡率低下で、

所得向上とか食糧事情の改善とか衛生環境とか医療とかういったことが原因になります。

わかりやすい。

 

これに対して出生率の変化は単に「産む人間がいるか」だけではなく

「その人々が産もうという気になるか」という要素が入り込んでくるので

原因も多岐にわたり将来予測も難易度が上がります。

 

出生率減少の普遍的な原因は「開発」だけで、

あとは時代や地域によって全然違いそうだなという印象を持ちました。

 

人類、なぜか……なぜかどの国でも同じで、

国の発展に伴い「多産多死」から「多産中死」を経て「少産少子」に人口が転換します。

しかし先進国に限らず途上国と言われる東南アジアでも出生率低下は起きていて、

経済要因すらある指標がここまできたら出生率が低下するという数値はない。

しかも経済が悪くなっているのに出生率が上向く現象もまたみられていて、

学者たちが頭を抱えているような状況です。  

このように統計を使って社会・経済・環境との関係性を積み上げていこう、という分野を「実体人口学」というそうで、

その中心にあるのが「人口転換論」であるらしいです。

実体人口学の基礎部分。

そしてこれに修正を入れた「第二の人口転換論」もあります。

 

 

人口置き換え水準という指標があります。

1人の女性が何人産んだら人口が維持されるかという値です。

死亡率の高い社会では大きくなりますが、先進国では2に近い値となります。

当然ですが2を切ることはありません。

 

人口転換論では出生率が減っていっても人口置き換え水準で落ち着くだろうというのが見立てでした。

 

ところがどこもかしこも、

 

本当にどこもかしこも、

 

しかも欧州では一斉に出生率が低下した結果、

あっちこっちで人口置き換え水準を下方に突き破っているのが実際です。

日本は特に低い、北欧を見習え、いやフランスだなんて騒がしい世界ですが、

いずれの国も底が抜けていることは違いがありません。

いやもう生物として種が縮小する、コミュニティの維持が不可能ということなので異常も異常なのですが、

地球レベルではまあまだ増えてるしいいのかなあ……などとぬるい気持ちになります。

完全に自分を棚にあげますけど。

 

 

日本の話を少し。

 

日本の少子化において強烈に効いているのは「晩婚化・非婚化」であるらしいです。

意外と有配偶者の出生数は持ちこたえてるんですね。

ひと昔前の「お見合い」にかわって自由恋愛が普通になって以来、

それに代わるマッチングシステムがないことが問題だそうで、

まあ確かになんやかんや一緒に暮らしさえすれば情も湧くし子供も作るかもねっていうのはあるでしょうね。

あと女性の社会進出。

露骨ですけどどうにも人間は生物なので、

出産可能な年齢も最適な年齢も存在する一方で女性が働くようになっているという。

もうこの辺りの思想の変化は戻せないので、

どうにか社会が変わっていかないといけませんねというお話。

自由は退廃だ!!(瞳孔ガン開き)なんて不可能ですしね。

 

 

そもそも歴史的に見れば人口問題とは「人口増加問題」を意味していて

今日のように人口減少が問題になるのは初めての局面です。

将来予測も含め、どの国も(学者も)苦労しているんだなというのがよくわかりました。

「子供を産まないなんて〇〇なんだから当たり前じゃん」みたいな言説には気をつけたいですね。

そんな簡単なものでも、なさそうです。